MPDスラスタの放電電流経路に関する数値的検討

摘要

アルゴンを推進剤とした10N級の定常作動自己誘起磁場型MPDスラスタを対象として，電磁流体?陰極シース連成シミュレーションを行い，放電電流経路を決定付ける主要な因子であるHall効果および陰極の熱電子放出の影響について検討した。また，これを踏まえて推進性能に関する検討を行った。その結果，以下の結論を得た。1)放電電流経路は，Hall効果により陽極側では出口端方向に，また陰極側では根元方向に傾く傾向にあるが，実験機で観測されているような陰極先端の温度が高い場合(本研究では，陰極先端温度を固定した上で根元温度を低下させる場合)は，陰極先端での熱電子放出が増加し，電流がより陰極先端に集中する。すなわち，陰極がこのような温度分布を持つ場合，放電電流経路のHall効果による偏向は熱電子放出分布により緩和され，陰極上でより一様な電流分布が実現する。