スイツチング周波数の向上に対応したディジタルコントローラ構成の実験検討

摘要

近年，SicやGaNなどの次世代パワーデバイスの登場やSiを用いたIGBTやMOSFETの高性能化によって，スイッチング速度が向上している。この高速スイッチングが可能になったパワーデバイスによって，電力変換器のスイッチング周波数を高く設定することができ，リアクトルやキャパシタなどの受動部品を小さく設計することが可能となりっっある。スイッチング周波数を高くする場合，電力変換機のコントローラとゲート駆動回路に問題が生じる。まず，コントローラにおける問題として，PWMの時間分解能が不足する問題と，リアルタイムに制御演算を行うための処理時間が問題となる。電力変換器のスイッチング周波数を高くすると，コントローラから出力されるPWM信号の周波数を上昇させることになるが，三角波比較PWMではPWMの周波数を高くするとDuty比の時間分解能が反比例して低下する。時間分解能の低下により，電流リプルの増大等，電力変換器の制御性能の低下が発生する。リアルタイム制御演算の処理時間に関しては，制御割り込み発生から次のスイッチンダを行うまでにDutyを演算する必要があるため，スイッチング周波数に反比例して演算時間を短縮する必要がある。このため，ディジタルコントローラには高分解能なPWMの生成と，高速な演算性能が求められる。また，ゲート駆動回路における問題として，ゲート駆動損失が挙げられる。MOSFETやIGBTのゲート容量を充放電して，スイッチング素子を駆動させるために，ゲート駆動回路が必要である。スイッチング周波数を高くするとゲートの充放電頻度が増加するため，ゲート駆動回路による損失が増加する問題がある。そこで，ゲート電流の制限に抵抗を用いた従来の抵抗ゲート駆動回路ではなく，インダクタンスLを用いてゲート容量C_issとの共振現象を利用する共振型ゲート駆動回路が多く研究されている。しかし共振型ゲート駆動回路を利用するにあたって，例えば文献の回路はディスクリート部品で構成されており，特性の再現性や汎用性が低いと考えられる。そこで，汎用の磁気アイソレータ内蔵ゲート駆動ICにクランプダイオードを付加することで，文献(2)の動作に近い共振型ゲート駆動回路を構成する。