固相結晶成長法による高性能 Bi 系圧電単結晶作製のための種結晶成長条件の検討

摘要

チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3,PZT)セラミックスは優れた圧電特性を持つことからセンサやアク チュエータに用いられている。しかしながら環境問題の観点から鉛を含まない圧電材料が求められている。 チタン酸バリウム(BaTiO3, BT)、マグネシウム酸チタン酸ビスマス(Bi(Mg1/2Ti1/2)O3, BMT)、ビスマスフェライ ト(BiFeO3, BF)の固溶体である BT-BMT-BF は非鉛圧電材料の 1 つであり、擬立方晶と菱面体相の相境界組成 の 1 つである 0.3BT-0.1BMT-0.6BF で圧電特性が向上し(d33=186 pC/N)、キュリー温度も 450°C 程度と高い。 セラミックスで得られたこの圧電特性をさらに向上させるための手法として、単結晶を作製し、結晶異方性 を利用することが考えられる。これまでにフラックス法により 0.3BT-0.1BMT-0.6BF 単結晶作製の試みが行わ れたが、目的組成の単結晶を得ることは困難であった。一方、組成ずれなく単結晶を作製する方法として固 相結晶成長法がある。先行研究では、0.3BT-0.1BMT-0.6BF とは別の物質の種結晶と 0.3BT-0.1BMT-0.6BF粉末 を用いて単結晶作製の試みが行われたが、両者が固溶し、単結晶を得ることができなかった。そこで、0.3BT- 0.1BMT-0.6BF セラミックスを粉砕して得た粒子を種結晶とし、細かい 0.3BT-0.1BMT-0.6BF 粉末に加え焼結 と粉砕を繰り返すことで、巨大粒子（単結晶）が得られるのではないかと考えた。本研究ではまず焼結助剤 として酸化ビスマスを用い、大きな粒子を持つ 0.3BT-0.1BMT-0.6BFセラミックスを得るための焼結条件（焼 結温度、保持時間、雰囲気調整粉）を調査した。また、焼結助剤量の影響についても調査した。