(P21-P0061)構成元素の比重差に基づくMg2Sn 結晶形成と熱電特性の関係

摘要

未利用廃熱の有効再利用法として，ゼーベック効果により温度差から電気エネルギーとして廃熱を回収できる熱電変換の発電技術が注目されている．Mg2(Si,Sn)熱電材料は500°C近傍の想定使用温度域における優れた熱電性能，構成元素の入手のしやすさ，無害等の利点により本格的な実用化が期待される．本研究グループではMg2(Si,Sn)の相安定性を理解して耐久性の向上を目指すためにMg-Si-Sn 三元系状態図を実験的に調べ，500°CではSn-rich のP 型組成領域が液相との共存領域と隣接することから組成変動に起因した局所溶融の原因となることを指摘した．この成果を踏まえ，本研究では相平衡に基づく作製プロセスの改善と耐久性を含めた熱電性能の向上を目標としている．そのために必要な相平衡の情報として，ライン組成化合物であるMg2(Si,Sn)相がMg 相または(Si,Sn)相とそれぞれ平衡する場合，原子レベルの平衡組成差であっても各元素の化学ポテンシャルの差異によって熱電特性には特徴的な違いが現れる可能性に注目した．本研究ではこの平衡組成差を容易に形成するためMg-Sn 二元系合金を作製した．Mg?Sn 相とMg 相およびSn 相との平衡を明確に識別するため，構成元素の比重差を利用して試料下部には比重のより大きいSn-rich 領域が，上部にはMg-rich 領域が形成するよう試み，ゼーベック係数に及ぼす影響を実測により理解することを目的とした．