2Q03 きぼう船外ハイビジョンカメラ(HDTV-EF2)の開発と運用

摘要

一般的な地球観測衛星は、太陽同期軌道に投入されることが多く、衛星直下の地表から見ると、上空を決まった時刻に通過する。このため、地表と太陽との関係から、分析がしやすい同条件での画像を取得することができる。また、極域を含む軌道のため、地球上のあらゆる場所をくまなく撮影することができる。一方、HDTV-EF2を搭載するISSは、軌道傾斜角約51度の軌道に投入されており、極域は観測することができない。また、ISS直下の地表の時刻は刻一刻と変わるため、一見、地球観測には不向きな軌道ではある。しかしながら、自然災害発生の時間帯は不定期であり、逆に言えば、一般の地球観測衛星が取得できない時間帯での撮影がタイミングによっては可能となる場合がある。また、例えばオホーツク海のような、緯度が軌道傾斜角の51度に近い地域の通過頻度は、太陽同期軌道の衛星よりも高く、時期によっては流氷の高頻度観測が可能な場合もある。さらに、HDTVEF2の自動追尾、動画撮影の機能を生かせば、例えば火山の噴煙の高度を分析したり、高感度撮影を生かして、夜景の変化から被災状況を分析したりといった、新たな分析ができる可能性も秘めている。迫力ある台風のダイナミックな動画映像は、気象衛星の画像よりも、一般の人々に危機感を啓発できる可能性もある。