ニッケル基合金のBWR環境中疲労き裂進展速度線図の検討（第1報,Paris則形式によるき裂進展速度式の検討）

摘要

原子力発電プラントの機器にSCCや疲労による欠陥が確認された場合には，（一社）日本機械学会維持規格に従った構造健全性評価を行うことでその機器の健全性を確認する．熱サイクルや振動により機器に変動応力が作用する場合は，維持規格に規定されている疲労き裂進展速度線図を用いた疲労き裂進展評価を実施する必要がある．BWRプラントのシュラウドサポートやスタブチューブなどNi基合金製機器での割れ事例が報告されているが，Ni基合金においてはPWR一次系水質環境中の疲労き裂進展速度および溶接金属の大気中疲労き裂進展速度がそれぞれ事例規格として発行されているもののBWR環境中の線図は整備されておらず，維持規格に基づく疲労き裂進展評価を実施できない状況にある．著者らは前報にてNi基合金溶接金属のBWR環境中疲労き裂進展データを基にParis則形式の疲労き裂進展速度線図を検討した．本報では溶接金属のき裂進展データの拡充を行い線図の再評価を行うとともに，母材熱影響部（以下HAZ部）のき裂進展データを用いてHAZ部の線図の検討を行った．