確率モデルに基づく運転行動からのドライバの歩行者への気づきの推定

摘要

自動車交通における歩行者事故の防止は，安心安全な社会を実現する上での重要な課題の一つである．自動車事故の大半はドライバの認知ミスが原因と言われている．ドライバの認知ミスによる事故を防ぐため，運転支援システムの研究や開発が進められ，一部は実用化されつつある．運転支援システムの例として，車載センサにより歩行者を検知しその存在をドライバに知らせるものがある．しかし，歩行者が進路前方に存在していた場合，大半のドライバはその存在に気付き，適切な行動をとると考えられる．その結果，歩行者を検出するたびにその存在を知らせる運転支援システムは，極めて煩わしいものとなってしまい，ドライバのシステムへの信頼を低下させることになってしまう．このような問題を避けるために，ドライバが歩行者に気付いていないときのみその歩行者の存在を知らせるシステムを考える．本論文では，前方歩行者へのドライバの気づきを推定することに焦点をあてる．ドライバは歩行者の存在に気付いたときには，歩行者が存在していないときとは異なる運転行動をとると考えられる．本論文ではこの考え方に基づき，ドライバが歩行者に気付いたかどうかをドライバの運転行動から確率モデルを用いて推定する手法を提案する．