(117-0067)元素単体と化合物構成元素の価数および1 原子あたりの遍歴電子数e/a の決定

摘要

Mizutani and Sato はフェルミ球とブリルアンゾーンの概念を基に遷移金属元素を含む54 個の周期律表元素の1 原子あたりの遍歴電子数e/a を評価し、その組成平均が任意の化合物が持つe/a 値を±10%の精度で再現することを示してきた [1, 2]．逆格子空間で定義された電子濃度e/a は単位胞内での一様な電荷分布を前提とする．一方、化学者を中心に価数が構成元素毎に定義されてきた．価数は実空間で論ぜられる量であり、単位胞内の電荷密度分布から求まる量である．本研究では、金属結合が支配する元素Na (cI2), 共有結合が支配するSi (cF8), イオン結合のNaCl (cF8), 電荷移動が顕著なZintl 化合物NaTl (cF16)及び遷移金属化合物AlFe (cP2)について、構成元素のWigner-Seitz cell 毎に単位胞内の電荷密度分布を正確に計算してそれぞれの系においてその価数とe/a をself-consistent に決定することを試みる．