ランタンへキサアルミネート溶射皮膜の高温腐食挙動に及ぼす微细組織の影響

摘要

高効率火力発電用ガスタービンの高温部材には，遮熱コーティング（TBC)の適用が必須となっている.TBCはボンドコート層とセラミックトップコート層の2層で構成されており，トップコート層は高融点，低熱伝導率のイットリア安定化ジルコニア（YSZ)が多く用いられているが，低質燃料に含まれるバナジウムやナトリウムなどの腐食性溶融塩に対する耐食性が低くコーティングの剥離等の問題を生じている.そのためYSZに替わる耐食性の高いTBC材料の研究が進められている.一方，マグネトプランバイト型の結晶をもつランタンへキサアルミネート（LaMgAl_(11)O_(19)，LaMA)はYSZに比べ優れた熱特性を持つことが報告されており, TBC材料の将来候補の一つである.このLaMA溶射皮膜の耐久性評価の一環として，腐食性溶融塩によるLaMAの高温腐食挙動の研究が行われている.LaMAの溶射皮膜の耐食性は皮膜構造の様々な因子に影響されると考えられるが，皮膜構造と高温腐食挙動の関係についてはあまり報告されていない.前報において，LaMA及びYSZ溶射皮膜の高温腐食試験を行ない，腐食挙動の比較を行った.しかし溶射皮膜の腐食挙動はマクロな皮膜構造の影響を大きく受けるため，十分にミクロな皮膜組織と腐食挙動の関係を調査·検討できていなかった.本研究では，LaMA溶射皮膜の微细組織を調査し，高温腐食試験において皮膜を粉末状にした試料で試験することで，皮膜構造による影響を取り除き皮膜中の微细組織が与える高温腐食挙動への影響を検討した.