構造解析を用いた骨格CT画像領域分割のための拘束条件自動設定

摘要

本研究では，マウスのCT 画像の関節部分を対象とした領域分割手法の提案を行う．骨は皮質骨と海綿骨から成り立っており，皮質骨は高い密度をもつ組織であり海綿骨は骨梁で構成されているが，対象とするCT 画像においては，皮質骨の薄い箇所は低い輝度値を持ち，海綿骨は一様に低い輝度値を持つ．皮質骨と皮質骨に挟まれる接合部は軟骨_ 滑膜_ 滑液等から成るが，一様に海綿骨以上のCT 値を持つ．骨と接合部のみで構成されるCT 画像を骨格CT 画像とすれば，骨格CT 画像において接合部の厚さは数画素程度である（図1(a)）．本研究ではこの解像度の悪い画像から，骨を検出することを目的とする．このことは，骨格を接合部で分割することを意味する．この目的に対し，我々はFEM の一種である画像ベースCAE3) で構造解析を用いて接合部で分離する手法を提案してきた1)．提案手法は，構造解析と画素の処理を繰り返すことで静解析で破壊を模倣するものである．具体的には，接合部に大きなvon Mises 相当ひずみ（以後，ひずみと略記）が発生するように境界条件を設定し構造解析を行い，最大のひずみを示す画素は構造上弱い部分であるために壊れるものとみなし，その輝度値を0 とする．また，荷重条件の自動設定手法も提案した. 提案手法は，ユーザの指定した画素集合におけるひずみ和が最大になる荷重条件を，最適計算で求める．ヒトは正確な接合部は認識できなくとも，接合部及びその近傍を認識することができることを利用し，このような集合をROI として入力する．荷重条件を背景に接する画素の双対で定義される表面節点（図1(b)）に限定することで，ROI におけるひずみの二乗和が最大にするべく，Gradient Ascent 法で計算した．良好な分割結果を得ることができるこれらの手法であるが，拘束条件を自動設定することができず，また，最大のひずみがROI 外に発生する問題があった．本研究においては，これまでの内容を元に拘束条件の自動設定を行う．無数に存在する境界条件の組み合わせ総数を低減させ，併せて，ひずみの分布Mを定量化することで，先の境界条件の組み合わせ全てを選択し構造解析を行い，最適なひずみの分布を得ることができる境界条件を用いて骨格CT 画像の領域分割を行う．提案手法の貢献は，有限要素法における境界条件設定問題を，構造解析を用いた骨格CT 画像領域分割に限定して解くこと，ROI 入力以外のユーザ入力を行わないで骨格CT 画像領域分割が可能になることが挙げられる．実際に，骨格CT 画像に適用することで手法の妥当性を検証する．