めっきによるピーリング工具の作製と微細放電加工への応用

摘要

放電加工を微細加工に適用する場合，工具として微細電極が必要となるが，チャックで把持できる電極径には限界があり，細い電極の取り扱いも困難である．そこで，我々はマイクロ加工用の微細電極をコアとして，周囲を融点が低く，容易に除去加工が可能な材料で被覆した，同軸形状のピーリング工具を提案してきた．これは，加工直前に被覆部を除去し，露出したコアを微細加工に用いる．これまで，Φ100μm のタングステン線の周囲にめっきによって亜鉛を被覆したピーリング工具を作製し，その被覆部のみを単発放電により瞬時に除去が可能であることを報告した．また，めっき浴に超音波振動を付与する事で，被覆部表面のくぼみの発生が抑制され，中心軸の位置精度が改善することを報告した．しかし，その作製には時間を要しており，中心軸の位置精度や被覆部の表面状態は，より一層の改善が必要である．そこで本研究では，被覆部表面の均一性の向上と，偏心量の低減，高効率に被覆を行う事を目的に，めっき条件（pH，電流密度）について検討した．さらに，より微細なΦ50μmのタングステン線に対してめっきを行った．また，作製したピーリング工具に対し，単発放電による被覆部分の選択的除去を行い，ピーリング工具を用いた微細放電加工を試みた．