工作機械用液温制御装置の高性能化と環境対応

摘要

工作機械の熱変形を抑制するためには,熱源の強制冷却が不可欠であり,液温制御装置が多用されている.ナノメートルオーダの熱変形を問題とする超精密加工においては,搭載する液温制御装置の性能として,千分の1度オーダの極めて高い温度精度が求められる.また，光学部品の超精密加工においては,加工時間が数十時間以上となることもめずらしくない.したがって,千分の1 度オーダの温度精度を長時間維持することが求められている.一方，加工の高精度化に加え，同時に高速·高効率化を実現するため，工作機械の多軸化が進行し，熱源の数と種類が増加傾向にある．多軸工作機械の熱変形の抑制においては，それぞれの熱源の冷却に最適な熱媒体（水·油性冷却液，潤滑油，作動油，水·油性切削液または研削液など）を用いる必要があるとともに，これら熱媒体には，冷却能力，温度制御方式（冷却部の熱交換構造），温度検出位置，温度設定を最適化した液温制御装置を適応することが望ましい．しかしながら，この液温制御装置を複数台用いる方式は，コストや設置スペース，消費電力が増大し，現実的に困難となる場合が多い．また現在，工作機械用液温制御装置を含む冷凍·空調機には，R-410A や R-407C などのHFC（Hydrofluorocarbon）系混合冷媒が多用されている．これらは地球温暖化係数GWP（Global Warming Potential）が二酸化炭素の1500 倍以上であり，環境保護の観点から課題を残している．そこで本研究では，工作機械の高精度化と高速·高効率化，環境負荷を低減する液温制御装置の開発を行った．