三次元筋骨格靭帯膝モデルの妥当性検証方法の提案

摘要

膝関節の不安定性により，関節構造の変性と歩行障害を惹起することが臨床研究にて示唆されているものの，疾患予防につながる膝関節の状態を評価するシステムは確立していない．この一因として医師による評価のばらつきが挙げられており，工学的なアプローチによるモデルの構築と評価の標準化は疾患予防に必須の課題である．膝関節は骨性の運動制限が少ないため，関節運動学的アプローチのように関節の遊びを考慮したモデルの構築は発症メカニズムの解明に不可欠となる．膝関節の自由度と可動域を制限する要素として，靭帯は大きな影響を与えている．過去にも膝の靭帯の研究は行われているが，関節の遊びを考慮し，三次元で靭帯を表現したモデルは数が少ない．その一因として，再現したモデルと生体データを照合することが困難なため，モデル自体がどの程度の妥当性を有するかを検証する方法が確立していないことが挙げられる．著者らもこれまでの研究2)で関節の遊びを考慮した三次元筋骨格靭帯膝モデルを作成したが，モデルの妥当性を検証するには至らなかった．そこで本研究では，モデルに順動力学を用いて任意の荷重を与えた結果を屍体実験の結果と比較する手法を提案し，妥当性の検証を行えるかを確認することを目的とする．