確率的モデル検査を用いた遺伝子ネットワークの解析

摘要

生命現象をシステムとして理解することを目的としたシステムバイオロジーは，制御工学や生物学の研究者を中心に盛hに研究が行われている．とくに，遺伝子ネットワークや代謝ネットワークといった生体ネットワークのモデリング解析，制御に関する研究は，主要な研究課題の一つである．一般に，生体ネットワークは高い非線形をもつ高次元の常微分または偏微分方程式を用いて表現されるが，解析や制御を考える場合は簡便なモデルを利用することが適切である．制御問題に関しては，ブーリアンネットワーク（Boolean Networks，BN），ハイブリッドシステムが頻繁に利用されている．しかしながら，問題を解くための計算時間の影響により，ハイブリッドシステムの適用は低次元の対象に制限される．一方，ブーリアンネットワークはブール関数を用いて遺伝子などの相互作用を表現したモデルである．したがって，単純化され過ぎているという問題点はあるが，大規模システムを対象とすることができるという長所があり，盛hに研究が行われている．さらに，実際の遺伝子ネットワークは雑音などの影響により確率的に動作していると考えられている．この観点から，ブール関数が各時刻で確率的に選択される確率ブーリアンネットワーク（Probabilistic Boolean Networks，PBN），切替時刻も確率的に選択される文脈依存確率ブーリアンネットワーク（Context-Sensitive PBN，CS-PBN）が提案されている．本論文では，遺伝子ネットワークのモデルとして，PBNを用いることとする．