大型歯車の燒入れ時の熱伝達率同定について

摘要

鋼部品の焼入れに関する熱処理シミュレーションでは，一般的に表面境界条件として焼入れ時のワークと焼入油の間の熱伝達率を設定する。高精度な解析結果を得るためには正確な熱伝達率を必要とするが，焼入れ時の沸騰現象は焼入れ条件やワーク形状によって特徴が異なるため，厳密な熱伝達率の同定は非常に困難である。代表的な熱伝達率同定方法として，温度勾配測定法，定常法，集中熱容量法，逆解析法などが挙げられるが（1），本発表では大型歯車形状を対象に，逆解析法による各部位の熱伝達率同定の試みについて報告する。なお，逆解析法では，一つの温度分布測定結果に対して複数の熱伝達率の解が存在するため）温度測定結果のみでは同定熱伝達率の高精度化は難しい。そこで，ワーク各部位の温度測定結果に加え, 焼入れ時のワーク表面における沸騰現象の観察結果を参考として熱伝達率を同定した。