炭化物の成長速度論にもとづく真空浸炭組織の計算予測

摘要

炭化水素との直接反応による真空浸炭は，ガス浸炭に比べ，表面C濃度や処理温度を高くでき，省エネ·迅速熱処理技術として期待される。しかし，処理品の形状によっては粒界にそった炭化物：セメンタイト（θ）が析出しやすく，鋼種に応じて数分オーダーで浸炭／拡散時間の調節が必要である。本研究では，Cr，Si濃度の異なる低炭素鋼の真空浸炭組織を詳細に調査し，モデル実験やシミュレーションの結果と比較することにより，多元合金系における粒界θの成長·固溶速度を検討した。そして，母相となるオーステナイト（γ）の表面境界条件を解析的に与え，浸炭／拡散過程におけるC濃度および粒界θ量の分布を精度良く計算予測する新しいモデルを開発した。