光ピンセットを用いた流路内物体操作とその電子顕微鏡観察のための開放型マイクロ流路デバイスの開発

摘要

近年，従来の抗生物質に対して薬物耐性を持つ細菌が出現しており，新たな作用機序を持つ抗生物質を探索することが求められている(1)．電子顕微鏡を用いて生細菌を高分解能観察することができれば，新たな抗生物質の発見に貢献する手法となりうる．これまで我々は電子線透過膜とマイクロ流路を組み合わせた MEMS 液体セルを開発してきた(2)．しかし，観察範囲が三次元的に電子線透過膜近傍(?m オーダー)のみに制限されてしまうため，観察に適した試料を観察することが困難であった．液中にある試料を三次元的に搬送する技術として光ピンセットが有望である．しかし，ポリジメチルシロキサン(PDMS)越しに光ピンセットを使うと，数十?m 厚の薄膜であっても捕捉力が大幅に低減され，液中にある数?m の物体を捕捉できなかった．そこで我々は，光ピンセットによるマイクロ流路内の物体操作と電子線透過膜による液中電子顕微鏡観察を両立するために，上下が開放された開放型マイクロ流路を開発する(図1)．