冷却ファンから発生する広帯域騒音の実験的予測法

摘要

近年，低温度熱源を利用した小出力オーガニックランキンサイクルの研究開発が進められている．この熱力学サイクルでは，R245faのような低沸点の冷媒が作動流体に用いられ，冷却ファンはその凝縮器における冷媒を冷却することに利用される．このような熱力学サイクルにおける冷却ファンはその風速で熱を直接排気するため，半開放型ファンはダクトを有さず，その静圧上昇も小さい．また，羽根車の出口境界は大気圧であるために，その翼素を通過する高い動圧の主流部の流れは二次元的に取り扱うことも可能である．この二次元翼素を通過する流れの解析方法の一つに翼素運動量理論（以下，BEM）がある．このBEMは，現在でも，風力タービンを開発する際の設計の初期段階における出力解析で広く利用されいる．著者はこのBEMを応用し，水平軸風車から発生する広帯域騒音を予測した．例えば，冷却ファンの翼素の流れが，水平軸風車のように二次元的な流れに置き換えることができると仮定する．しかし，ファンは被動機であるために，原動機である風車におけるBEMの解析の手続きとは原理的に異なる．被動機であるファン性能の設計では，速度三角形とその角運動量に基づく理論全圧が基礎理論として用いられる．これらの原理をファン騒音の予測に適用することができるならば，羽根を二次元翼素のセグメントに分割し，そのファン騒音を簡便に予測する方法論を提供することが可能になる．