HYFLEX模型周りの熱化学非平衡流の三次元シミュレーション

摘要

有翼宇宙往還機の開発においては，大気圏再突入時に 加わるピッチングモーメントの正確な予測が技術的な課 題となっている．1981 年, スペースシャトルSTS-1 の大 気圏再突入飛行において想定外の機首上げモーメントが 生じ, 安定飛行のため予測値の2 倍以上のボディフラッ プ舵角が必要となった．また，1996 年にJAXA で実 施されたHYFLEX の飛行試験では，マッハ数8 を超え る極超音速領域で，予測値と大きく異なるボディフラッ プ舵角を要する飛行が行われた．この問題は当時の風 洞試験で見積もられたピッチングモーメントが，実際の 飛行試験時と差異があったことに起因すると考えられて いる．当時の研究では，この縦トリム特性予測の不正確 さは，主に極超音速時に気体分子が解離することで現れ る実在気体効果の影響と考察されている．しかし実在 気体効果を考慮した修正のみでは，モーメント予測のず れを説明できないため, 現在では, 十分高い圧力条件, お よび相当サイズの模型を用いた実験が可能であるHIEST を用いた実験的研究が進められている.