キャンバ角変化を利用した三輪車両の運動特性解析に関する研究

摘要

近年，安定性や運動性能の観点から主にオートバイの分野で旋回内側にロール角を持つ前二輪，後一輪の三輪車両が注目されている．このような車両は制動性能に関して，直進走行からの制動におけるタイヤ摩擦係数に着目した研究や前片輪がスリップした運動特性に着目した研究が行われている．しかし，こういった三輪キャンバ車両の研究は二輪車に比べ非常に少なく，基礎的な運動特性も明らかになっているとは言い難く，今後の研究が期待されている．特にこのような車両は前二輪の機構によって荒れた路面の走破性や，オートバイの持つ旋回制動時に発生する車体の立ち上がり挙動などを緩和できる可能性があるが，これらの現象を力学的に把握するには種々の特性を表現する運動力学モデルが必要となる．そこで我々はこれまで三輪キャンバ車両の基礎特性として定常円旋回中の力の釣り合いに着目し，荷重変化や横力変化を左右輪で配分することで定常状態の釣り合いに幅があることを確認した．本研究ではこの研究をさらに拡張してより詳細に三輪キャンバ車両の運動特性を把握するため，車体の横運動，ロール運動，ヨー運動および操舵系まわりの運動の計4自由度の運動方程式を構築し，固有値解析を行い，このような車両の運動特性を明らかにすることを目的とする．