冠状面の運動を考慮した受動型動的二足歩行の数値解析

摘要

センサやアクチュエータによる能動的な制御を行うことなく，重力のみをエネルギー源とし，脚の持つダイナミクスにより緩やかな斜面上を安定的に歩行する歩行形態を受動型動的二足歩行という．人の歩行のような自然な動作やエネルギー効率の高さが受動型動的二足歩行の特長といわれている．受動型動的二足歩行の研究はMcGeer による研究がその先駆けとして知られており，最近でも様々なモデルを対象とした研究が行われている．また，受動型動的二足歩行は，非線形の運動方程式によって支配される両脚の連続的な運動と脚の切り替え時の衝突運動を繰り返す一種の自励振動と考えることができ，分岐現象やカオスなどの非線形現象についても様々な研究が行われている．筆者らの研究グループでは2 次元のコンパスモデルや，膝を有する2 次元モデルや，膝関節は持たないが，脚の伸長により平地歩行を行う2 次元のモデルの数値解析などを行ってきた．本研究では，実際の歩行と同様に3 次元空間での歩行を実現するため，膝関節をもたない脚の矢状面内の運動のみを考慮した2 次元の解析モデルを拡張し，冠状面内の運動も考慮した3 次元の解析モデルを提案した．また，数値解析により，股関節部の長さや重心の高さなどのパラメータが定常歩行の安定性に及ぼす影響を中心に調べた．