展開型モーフィング翼の柔軟マルチボディシミュレーション

摘要

飛行中に変形する航空機翼をモーフィング翼という．現在，各国の研究機関が飛行中にスパン方向に折り畳み展開できる展開型モーフィング翼を研究開発している（図1）．この展開翼は複数の翼部材がヒンジジョイントで結合されている．このジョイント周りに配置されたアクチュエータで飛行中の折り畳み展開を可能とする．2010年に発足したJAXA の火星探査ワーキンググループは航空機による火星探査を計画している．しかし，航空機を地球から火星に運搬するためのロケット，宇宙機，大気圏突入用カプセルには収納スペースに上限がある．収納スペース節約を可能とする展開翼を利用すれば，この問題を解決できる．火星上空でカプセルから解放された航空機は飛行しながら，その翼を展開し，探査を開始する．また，2016 年頃からイギリスのブリストル大学が，旅客機などへの適用を目指した展開翼を提案している．この研究では，突風作用時にジョイント部のヒンジ剛性を低下させることで，翼根に発生する曲げモーメントを低減できることを示している．その他にも，展開翼は航空機の抵抗の約40%を占める誘導抵抗の低減や，飛行安定性の向上にも役立つ．