板状形状記憶合金の座屈を用いたパッシブ防振装置に関する研究

摘要

近年の機械や構造物のさらなる高性能化?高精度化に伴い，高性能な防振装置への需要は益々高まっている．中でも，防振機構に制御系やアクチュエータを含まないパッシブ防振装置は，動作の安定性や設置コストの面から，開発?研究に対する需要が高い．一般に，パッシブ防振装置の性能は，防振対象を支持した際の固有振動数を下げることで向上させることができる．固有振動数低減化のために支持剛性を低減化した場合，鉛直方向の防振では，防振対象の自重による静的変位が増大する問題がある．そのため，鉛直方向の防振では，防振対象を十分に支持するための高い静的剛性と，固有振動数を低減化するための低い接線剛性という，相反する2 つの特性が要求される．これまでの研究で，これらの要求を実現するために，多くのシステムが提案されている．著者らは，既報において，2 枚の薄板はりで構成されるL 字型はり構造物の座屈を用いた防振装置を提案し，不安定座屈モード（静的負剛性特性）を利用した防振装置の高性能化について検討した．本装置は簡易な構造により一定の防振性能を発揮できるものの，2 次以上の振動モードの励起による防振性能の悪化や，SUS 系材料を使用することに起因するはり部材の塑性変形の影響などが課題となっていた．