３次元点群データを用いた歩行時の全身計測システム

摘要

近年の高齢者人口の増加に伴い，歩行能力の低下による転倒発生件数も著しく増加している．高齢者の転倒は，外傷や骨折に加え，頭を強打し脳損傷を来すなど，生活の質を低下させる要因となりうる．そのため，地域保健活動等の臨床現場において高齢者の歩行能力低下を早期に発見するための歩行計測試験が実施されている．その中でも，直進歩行と旋回運動の一連の動作から成るTimed up and go (TUG) 試験(3)は，歩行能力や動的バランスを総合的に評価可能な運動課題として着目されている．現在は理学療法士のストップウォッチによる課題遂行時間の評価や観察による分析などの定性的な評価に留まっているが，歩行能力を詳細に評価するためには，歩幅などの歩行パラメータに加え，動作時の関節角度，重心挙動といった3 次元の動作の定量的な評価システムが必要である．光学式3 次元動作解析装置やレーザ測距センサなどの機器を用いて，歩行能力の定量的評価が試みられているが，臨床現場で多数の高齢者の歩行解析を行うためには，非装着であるなど被験者への負担が少なく，安価で簡便かつ3 次元計測可能な装置を用いることが要求される．