マイクロプラスチックの海域汚染の状況

摘要

人為的漂着ゴミの70%程度は廃プラスチックである海岸に打ち上がったプラスチック ゴミは，紫外線や寒暖差によって劣化し，さらには物理的な刺激も加わって次第に細片化 していく. Andrady(2011)が紹介する実験によれば，陸にあるプラスチックは海水中に浸し たものよりも劣化が早く，半年もすれば引張強度が半減する.実際に，海岸に漂着したプ ラスチックゴミの平均滞留時間(海岸での滞在時間)には，約半年という見積もりがあり,この引張強度の「半減期」と整合的である.もちろh，この期間は海岸形状や周辺の自然 条件に強く依存するであろうが，いずれ海岸は漂着プラスチックゴミが劣化し破砕する場 所として機能している.海岸で破砕したプラスチックゴミは波に洗われて再漂流し，また 再漂着した海岸で細片化を繰り返す.比較的大きなプラスチックゴミは，浮力を得て海面 近くを漂うため，風波の伝播に伴う海水の質量輸送(ストークスドリフト；海面で最速値を 持ち，深さ方向に減衰する）によって海岸に運ばれやすい.海は大きなプラスチックを選択 的に海岸に運び，そして細片化させる機能を持つのである.最近の研究者は，細片化を繰 り返して大きさが数cmから5mm程度になつたプラスチックゴミをメソプラスチック，5mm を下回ったものをマイクロプラスチック（写真1)，そして，さらに破碎して数Mmを下回つ たものをナノプラスチックと呼hでいる.