モータドライブの温故知新：総論

摘要

当たり前のように電気自動車EV やプラグインハイブリッド自動車PHV が社会に浸透し，手のひらに乗るゲーム機Nintendo Switch の中でさえ沸騰冷却システムが用いられている。今となっては，パワーエレクトロニクスの技術が入っていない製品を探すのが難しいほどの広がりがある。モータドライブ分野でのパワーエレクトロニクス技術の発展の歴史を見ると，1970 年代後半から，小容量の誘導モータを駆動する汎用インバータ?鉄鋼圧延主機用大容量直流モータを駆動するサイリスタレオナード?大容量のファンポンプ用交流モータを駆動する電流形インバータや負荷転流形インバータ(LCI)など，これら製品の適用が活発となった。1980 年代から1990 年代にかけて，半導体デバイス?主回路トポロジー?マイクロコンピュータ?各種制御技術の高度化により，高機能化?大容量化?量産化が進hだ。サイクロコンバータや中性点クランプ方式の3 レベルインバータなどの新しい主回路トポロジーが適用され，ベクトル制御をはじめとする各種新制御の開発が進み，これらを支えるマイクロコンピュータの能力も向上し，発展期を迎えた。その中で市場ニーズも多様化し，より高いキャリア周波数の適用による高応答化?セル多重方式などによる直接高電圧化やフライングキャパシタやマトリクスコンバータなどの新しい主回路トポロジー?PMSM をはじめとする多様なモータ技術?センサレスやオートチューンニングなどの新しい制御技術の開発と製品適用も進hだ。現在も，Si デバイスの能力向上に加えてSiC やGaN などの新材料適用によるデバイス開発，より新しい主回路トポロジーの開発，可変起磁力などの新しい考え方のモータ開発，AI やIoT なども活用した制御システム，など様々な開発が進hでいる。