火星環境を模擬した高高度実験機の特性解析と制御系（第2 報）

摘要

本稿では，文献1)の昨年度の本シンポジウムで発表した同タイトルの講演に引き続き，火星飛行機のための高高度飛行実験機の動特性の解析と制御系の検討結果について第2 報として述べる．我が国の火星探査航空機リサーチグループは，火星探査時の飛行環境に近い成層圏での飛行の成立性と空力データの取得を目的として2016 年度に実施した第1 回高高度飛行実験(MABE1)に引き続き，2 回目の高高度飛行実験(MABE2)に向けて，準備を進めている．文献1)では，実験機の特性として，飛行環境と機体の空力特性の両面からエレベータ操舵が反転するバックサイド領域に遷移しやすい性質を有し，短周期モードの周波数が高いことから時間遅れ要素の影響で制御性能が劣化しやすい性質を明らかにした．文献3，4)に示されているように，一般に，エレベータの舵効きが反転するバックサイド領域への遷移は，エレベータ舵角から飛行経路角に関する伝達関数の分子の定数項の符号が負から正に反転することによって生じる．この符号の反転は，エレベータ舵角のピッチングモーメントに与える影響を表す制御微係数Mδe にかかる係数の符号の変化が主な原因である．