カイロプラクティックへの応用を目指した3 次元画像計測を用いた人体の姿勢歪み計測

摘要

中高年齢者に限らず10代の若年者でも日々の生活の中での習慣や癖などにより姿勢は歪hでいる．この歪みは肩こりや腰痛などの筋骨格系障害をもたらす大きな原因と考えられている．現在，人体の姿勢歪みを定量的に計測する簡便な方法は確立されていない．CTスキャンをはじめとした大掛かりな装置や，人の主観的な判断に頼った計測が主流である．上記の状況の中，姿勢歪みを定量的に計測し診断するという作業について，1枚の画像からカイロプラクティック専門家の知識による判断で評価が続けられている．カイロプラクティックとは，体の歪みを健常化させて症状を軽減させることを目的とした手技療法であり，姿勢歪みについて強く関連する．具体的な方法をまとめると，矢状面肩甲帯の位置は，被験者立位像の矢状面側をディジタル一眼レフカメラで撮影し，コンピュータを用い編集ソフトPageMaker の画面上で頚部前後厚径の中央位置と，肩付根前後厚径の中央位置を割り出し両中央点との水平距離を計測した．頚部付根厚の中央点は鉛直線が通過する位置と定義し，肩甲帯位置は頚部付根厚中央点から屈曲位側を正数値，伸展位側を負数値とし実数値（mm）で表した．ただこの評価の場合，専門的な知識が必要となるのに加えて，人の判断という意味でどうしてもばらつき恣意的が発生すること，時間的制限があることなどが課題である．そこで本研究では，安価なディジタルカメラを用いたステレオ画像計測による定量的な姿勢歪みの計測方法を考案し，安価で簡便な計測システムの実用化を目指す．また，本方法はマーカーを装着することで脱衣操作はなく女子被験者の抵抗感も小さく，多数の被験者を短時間に計測できる．計測データが増加することで信頼性，新たな知見が明らかになる可能性がある．これらより，本法は歪みがもたらす筋骨格系障害の原因究明に期待できると考えている．