後方から乗り込む福祉車両に向けた前向き駐車支援システムに関する研究

摘要

現在，図1に示すような車いす利用者が自ら自動車を運転するための手動装置と呼ばれる装置が開発，実用化されている．これは自動車の指定部品の一つであり片手でステアリング，もう一方の手でアクセルとブレーキを操作できるものである．しかしながら，手動装置が適応できる範囲は両腕が健常者並に使える者と限られており，下肢障害に加えて片手しか使えない等の上肢障害が加わった重度な障がい者は自動車の運転が困難である．この問題を解決するために，ジョイスティック1本で自動車を運転することを可能にした運転装置が開発され，これまでに安全性の向上が検討されてきた．しかしながら，未だに一連の動作が煩雑となる場合があり，その一つに駐車が挙げられる．駐車には車両の軌道の予測，正確なハンドルおよびペダル操作，シフトレバー操作等が求められ，それらを重度障がい者が車両を運転しながら行うことは大きな負担である．また，このような福祉車両では運転者が車いすのまま車両のバックドアからスロープ，リフト等で乗り込む方式が多く用いられている．この場合，バックドアを大きく開く必要があるため，駐車方向は前向きに限られる．前向き駐車は内輪差やそれを考慮した軌道計画が必要であり，駐車が難しいという点がある．そこで本研究ではジョイスティック式自動車運転装置を利用した前向き駐車支援システムの開発を行う．重度の障がい者には負担となっている操作を自動操縦または支援するシステムを開発し，安全性および利便性の向上を検討する．