モモシンクイガ検出システムにおける被害果の出荷リスク低減に関する検討

摘要

農作物の国際競争力を高め，輸出を拡大することは重要な課題である．特に，果物は海外で人気が高く付加価値が期待できる．2013年から2016年までの統計によると輸出額の上位はリンゴ，ブドウ，モモ，ナシ，ミカンの順でありその順位は変わっていない．本研究では，海外での需要の伸びによりここ数年非常に輸出が伸びていて，全体の出荷額3位となる山梨県の特産品の一つであるモモの輸出に着目する．他国産のモモは非常に硬くて少し小さいものが多く，完熟した果実を食べる日本のスタイルとは若干違っていることもあり，日本産は非常に評判が良い．特に，台湾や香港では中秋節の贈答品として果物を送る習慣があり，日本のモモは人気が高い．そのため，台湾と香港向けのモモの輸出量が多く，モモ全体の約9割が台湾と香港へ輸出される．ここで，モモを台湾向けに輸出するときには，モモシンクイガが問題となる．モモシンクイガとは幼虫の時にモモの中に入り，成虫になるとモモから出てくる蛾の一種である．この虫は台湾には生息しないため，幼虫の入った被害果が台湾国内に入ると，生態系が破壊されるだけでなく，現地の果物にも被害がある．そのため，検疫条件が決められており，モモシンクイガの幼虫がモモの内部に生存する果実（被害果）を輸出すると輸出停止などの措置が課せられる．