小口径ジャーナル軸受における安定化最適流量の実験的検討

摘要

ジャーナルすべり軸受は，軸と軸受を非接触で支持するため耐摩耗性に優れており，ジェット機のエンジンから火力·水力·原子力の発電機タービン，ハードディスクドライブなど数多くの回転機械に用いられている．近年，省エネルギー化·省スペース化の指向から回転機械は小型化·高速化の傾向にある.しかし，ジャーナルすべり軸受では高速回転時にオイルホイップと呼ばれる自励振動が発生することで軸と軸受が接触し，破壊に至る危険性がある．現在，オイルホイップの抑制を目的としてティルティングパッド軸受が広く用いられているが，同軸受は形状が複雑であるため小型化に不向きであり，かつコストが高いといった問題がある．このような問題に対して橋本らは，軸受に供給する潤滑油量を減少させるスターブ潤滑を用いたオイルホイップの抑止法を考案し，小口径真円ジャーナルすべり軸受において高速回転時に高い安定性を有することを理論および実験の両面から明らかにしてきた．しかしながら，スターブ潤滑下では潤滑油量の減少により油膜厚さが薄くなるため，急激に油膜温度が上昇し焼付きを起こす危険性が高まると考えられる．また、スターブ潤滑下では軸受内にキャビテーションが広く発生するが，キャビテーションが軸受内温度に及ぼす影響についてはあまり検討がなされていない．さらに，上にも述べたようにスターブ潤滑を用いることで安定化が図られることは確認されているが、外乱などが加わった場合にはオイルホイップが生じて不安定化する恐れがある．このような背景の下，本研究ではスターブ潤滑下において小口径ジャーナルすべり軸受内の温度分布測定とキャビテーションの可視化実験を同時に行い，キャビテーションが軸受内温度に及ぼす影響について検討した．また，供給流量を変化させた際のスターブ潤滑下において加振実験を行い，小口径ジャーナル軸受における安定化最適流量について検討したので報告する．