水棲微小生物の推進機構に関する数値解析（定常層流下における単一遊泳脚モデルの形状が推進力に与える影響）

摘要

生物が進化の過程で獲得した優秀な機能を工学的に利用するために，その機能のメカニズムを解明する研究が数多く行われている．たとえば，小型ロボットの開発のために，微小生物の飛行や遊泳機構に関する研究が行われている．本研究で対象とする体長が数mm から数cm スケールの水棲微小生物は，微細な毛を有する複数対の遊泳脚(以下，繊毛遊泳脚と呼ぶ)を平泳ぎのように動かすことで推進することが知られおり，その挙動の観察や移動速度計測などの研究が行われている．この遊泳脚は，ゾウリムシのような，より小型の生物の推進機関である繊毛や鞭毛と比較して大きく，微小スケールに起因する相対的な粘性の増加による推進メカニズムと異なると考えられる．また，脚は板型をしておらず，魚類等とも推進メカニズムが異なると考えられ，この推進メカニズムの詳細は不明である．そこで，本研究ではopossum shrimp を例にとり，繊毛遊泳脚による推進メカニズムを解明することを目的とし，その基礎的検討として本報では，一本の遊泳脚を円柱状の軸とそれに直交して設置した円柱列でモデル化し，円柱列の間隔および周囲流体の速度と得られる推進力との関係を数値的に解析した．