細胞骨格張力が単離腱細胞の代謝能へ与える影響

摘要

腱は骨と筋肉を結合する軟組織であり，筋肉によって発生した力を骨へと伝え，関節や肢の動きを可能としている．腱の構成要素はコラーゲン線維であり，腱の長軸方向に沿って配向している．コラーゲン線維間には線維の走行方向に沿って腱細胞が存在し，紡錘形を示しながら互いに結合している．腱は関節の動きに伴い繰り返し引張り負荷が作用しているため，腱細胞の繰り返し引張り負荷に対する応答を調べる研究が多く行われてきている．また，腱細胞の細胞骨格張力を非定量的に変化させ，細胞の応答を調べた報告もある．しかし，細胞骨格張力の変化による腱細胞の機能変化の詳細についてはまだ知られていない．細胞は基質接着中に基質に対し牽引力を発揮しており，その牽引力は細胞の形態や機能の維持に関わっている．マイクロピラー基質は牽引力を測定するデバイスの一つであり，微小柱のばね定数と変位よりフックの法則を用いて牽引力を求めることができる．また，細胞骨格を通じて発揮される牽引力は細胞骨格張力を反映していると言える．そこで本研究では，剛性の異なるマイクロピラー基質上に腱細胞を播種する方法と，ミオシンII の特異的阻害剤であるBlebbistatin により化学的に処理する方法により，腱細胞の細胞骨格張力を変化させた．その後，腱細胞の牽引力と形態を観察し，また，同化作用を示すI 型コラーゲンと異化作用を示すMatrix metalloproteinase-1（MMP-1）の遺伝子発現を定量リアルタイムPCR により測定した．