電子線照射dl-α-Tocopherol混合超高分子量ポリエチレン内におけるVitamin E ラジカル還元の試み

摘要

我々は，人工膝関節用摺動材料としてdl-α-Tocopherol（以下Vitamin E）混合超高分子量ポリエチレン（以下UHMWPE）を開発した．UHMWPE にVitamin E を混合することによって，UHMWPE 摩耗粉に対する生体反応性の抑制効果を報告してきた．そのため，本材料は人工膝関節のみならず，人工股関節への応用も期待されている．人工股関節では比較的低荷重の多方向摺動が加わるため，UHMWPE の摩耗に対しては電子線架橋処理が有効であるとされている．しかしながら，我々は電子線架橋処理によりUHMWPE 内のVitamin E がラジカル化することを報告し，さらにVitamin E のラジカル化によって，Vitamin E 添加による上記の生体反応性抑制効果が減弱する可能性を指摘してきた．本研究では上記の問題を解決するために，Ascorbic acid 6-palmitate を用いて，UHMWPE 内におけるVitamin E ラジカルの還元を試みた．UHMWPE 内におけるラジカルの測定には電子スピン共鳴（Electron Spin Resonance，以下ESR）法を用い，試料内におけるVitamin E ラジカルの経時変化を測定することによって，Ascorbic acid 6-palmitate によるUHMWPE 内のVitamin E ラジカル還元の可能性を検討した．