運転姿勢評価のための車両·人体·筋骨格の統合的動力学モデルの構築

摘要

近年，電気自動車に関する技術の発達や，バイワイヤ技術により車両設計の幅が広がっている．さらには，倒立振子型平行二輪車の車両や，電動車いすなど，従来とは異なった形状の車両が開発されるようになってきた．このような車両は，持続可能な発展型社会の観点から，人と環境にやさしく，快適かつ効率的な近·中距離移動を実現するための車両として開発が盛hに行われている．これらのさまざまな車両では，運転者は従来とは異なる運転姿勢をとる可能性がある．また，運転姿勢だけではなく，高齢者や女性運転者の増加により運転者に関しても多様化している．特に，高齢化社会を考える上で身体特性を踏まえた車両設計は重要である．高齢者に関する研究としては，老化による身体特性の低下に関する研究などがあり，今後，より活発になることが予想される．これら各人各様の身体特性を踏まえ，さらに多様な形状の車両と組みあわせてシミュレートできる統合化されたシミュレーションモデルが必要であるといえる．しかしながら，市販のソフトウエアには，車両モデルや筋骨格モデルなど個々のシミュレーションモデルはあるが，一貫した評価を行うことのできるソフトウエアはないようである．そこで本研究では，車両の様々な運動から運転者の身体負荷評価までを一貫して行える計算機シミュレーションシステムの開発と，それに基づき次世代自動車の運転操作姿勢を評価·提案することを目的とする．本稿では提案システムの概要説明と姿勢評価結果についての考察を行う．