ポート噴射と直接噴射による層状混合気とその燃焼位相が圧縮着火燃焼に及ぼす影響

摘要

予混合圧縮着火は髙効率·低エミッション化を具現化する燃焼法として期待されているが，高負荷での急峻な燃焼，低負荷条件での未燃成分の排出量増加，着火時期制御といった本質的な課題を有する．これに対して，燃料の化学反応特性，混合気濃度や温度の成層化を利用した方法などが提案されている．また，稲垣ら，Kokjohnらは吸気ポートから反応性の低い燃料を供給し，直接噴射によって反応性の高い燃料を噴射して，これらを燃焼室内に成層分布させることで，広い運転負荷領域において髙効率·低エミッション運転を実現している．一方，著者らはこれまでに燃焼室内に希薄に分布させた反応性の高い燃料と反応性の低い燃料の直接噴射を組み合わせた高燃焼効率·低NO_x運転の可能性を調べてきた．反応性の高い燃料が希薄混合気由来の未燃分を低減し，直接噴射により形成されるリッチ混合気の燃焼位相を遅角してNO_x生成を抑制するためである．ところで，希薄混合気の燃焼に伴う発熱がリッチ混合気の着火を促すこの方法では，直接噴射燃料の反応性の影響は小さい．換言すれば，吸気ポート噴射と直接噴射に同一燃料を用いても同様な効果は得られる可能性がある．そこで，本稿ではポート噴射と直接噴射に同一燃料を用い，直接噴射時期と噴射量割合を変化させ，種々の層状混合気を形成した．さらに，オクタン価の異なる三種の標準燃料を用い，その混合気と燃焼位相が燃焼·排気特性に与える影響を考察した．