蒸気加減弁の弁体に作用する流体力に関する研究

摘要

火力発電や原子力発電プラントの主蒸気系の流量制御弁（蒸気加減弁）はプラントの出力を制御するために様々な弁開度，圧力比のもとで運転される．特に絞り運転時には弁前後の圧力差は大きく，弁周辺の流れは剥離した遷音速流れとなる．このような状態では流れの不安定性により弁周辺では強い圧力変動が生じ，最悪の場合弁の故障につながる場合がある．著者らはこれまでに弁周辺での非定常流れの特性を調べ，また弁体の支持剛性が不十分な場合には弁体と流体の振動の強い連成振動が起こることを明らかにした．また，弁体を一方向に首振運動するように加振することで，その応答として負の付加減衰が弁体に作用することを明らかにした．本報では一連の研究の継続として，弁体の振動時の影響に関する検討を行った．これまでに弁体を低剛性の支持棒で支持して行った実験では，弁体の運動は楕円軌道を描く周期的な振動が観察された．しかし，このような実験では，結果に支持系の構造減衰の影響が含まれるため，一般的な議論は難しい．そこで本研究では弁体の一方向への首振り加振に加えて，円軌道で加振することで，弁体振動の軌道の形状が流体による付加減衰へ及ぼす影響を調べた．本研究では実験で様々な運転条件下での計測を行い付加減衰の性質を調べるとともに．数値シミュレーションを行い，付加減衰が負になるメカニズムを調べた．