摩擦攪拌接合におけるプローブ挿入速度が2024アルミニウム合金継手の機械的性質に及ぼす影響

摘要

摩擦攪拌接合（Friction Stir Welding：FSW）は摩擦発熱と塑性流動を利用した板材の固相接合法の一種である．FSW では溶融溶接で発生しやすい気孔，凝固割れなどの欠陥が生じず，接合に要するエネルギー効率が高い．これらの利点から，発明されて以来多くの研究開発が進められ航空機，鉄道車両，土木構造物を中心として種々の産業分野で実用化されている．FSW の接合条件として工具回転数および接合速度が挙げられ，これらのパラメータは被接合材料の材質それぞれに適正接合条件範囲が存在する．そのため工具回転数および接合速度を組合せてFSW を行った研究報告は多数ある．これらの主要なパラメータ以外に，初期条件としてプローブ挿入速度および予熱時間があり，著者らは先に5052 アルミニウム合金板を用いてこれらの条件がFSW 継手に及ぼす影響について報告した．その結果，継手強度に及ぼすプローブ挿入速度と予熱時間の影響を明らかとした．しかしながら，FSW におけるプローブ挿入速度および予熱時間に関する研究報告は少なく，他の被接合材料への影響については明確ではないのが現状である．本研究では2024 アルミニウム合金板を用いてFSW を行い，プローブ挿入速度および予熱時間が撹拌部の組織および継手の機械的性質に及ぼす影響について検討した．