グリースで潤滑された転がり接触部近傍の潤滑状態と潤滑剤組成の直接観察

摘要

ウレアグリースを微量供給した転がり軸受の低速度域の摩擦抵抗は，グリースの混練の程度により，異なることが報告されている．また，運転後の転走面に残るグリースのチャネリング形状と増ちょう剤/基油比率を顕微FT-IR により測定した結果，高せh断グリースのほうが転走面の残存グリース膜が薄いが，増ちょう剤比率は低いことが示唆されている2)．しかしながら軸受運転中のグリースの撹拌状態やこの増ちょう剤/基油比率の変化を直接測定したわけでなく，この現象と低摩擦発現の因果関係は明らかになっていない．転がり接触における運転中の潤滑状態と潤滑剤の変化を直接測定した例として，顕微FT-IR を用いたHertz 接触域近傍の合成油·グリース増ちょう剤分子挙動の直接観察等が報告されている3)．本研究が明らかにしようとするウレアグリースによる低摩擦も同様な観察が有効と考えられることから，ここではスラスト玉軸受と同様な運転状態下で転がり接触部近傍の増ちょう剤/基油比率変化を顕微FT-IR により直接観察できる装置を作成し，運転中の増ちょう剤/基油比率について調査した．