薄膜発熱体による金型温度制御における熱拡散の影響

摘要

射出成形では樹脂材料の急速な冷却に起因する成形不良を防止するために金型温度を制御する必要がある[1].一般に，金型は金属製であり熱容量が大きいため，金型の必要領域のみを選択的に加熱/冷却する考え方が存在する[2].本研究で扱う金型は，金型ベースの上面に断熱層としてジルコニア層(ZrO_2)を設置し，さらにその上にニッケルリン(NiP)を薄膜発熱体として設けている.この構造ではNiP薄膜を通電加熱することで効率的に金型表面の温度が制御できる.本手法を一般的な三次元形状（一例としてポケット構造）を持つ金型に適用し，急速加熱を行った場合，発熱状況に不均一が生じるため，NiP薄膜の厚さを局所的にコントロールする事で，発熱状況の均一化を検討した[3].一方で，金型面内の熱伝導を考慮すると，時間経過による不均一性の緩和が期待できるが，生産性の観点からは，加熱時間が短い方が望ましい.そこで本研究では，同じくポケット構造を有する系を対象として，投入電力や断熱層の熱伝導率が与える，発熱状況の時間変化への影響を実験及び計算により検討し，表面温度の均一化を図るために望ましいと考えられる加熱時間および断熱層の熱伝導率を考察した.