ガラス短繊維強化複合材料を用いた射出成形品における高次構造形成メカニズムの研究

摘要

ガラス繊維強化樹脂（以下，GFRP)は，低サイクルタイムによる量産が可能な射出成形によって成形されることが多い.射出成形時の樹脂流動の影響を受けて、繊維は様々な方向へ配向する.繊維配向は，成形品の機械的特性に大きく影響する.成形品の強度や剛性を精緻に予測するために，成形品内部の繊維配向を予測することが重要となる.従来の研究では充填途中における繊維配向分布の評価は十分になされていない.多くの研究者によって繊維配向の予測技術について検証が行われてきた.近年，Folgar-Tuckerモデルでは，実際の繊維の配向挙動と乖離することが明らかとなってきた.この乖離は予測に対し，実際の配向挙動はより遅延することが原因である.この結果，いわゆるスキン層とコア層から成る層構造にも乖離が生じる.一般的に射出成形の厚み寸法は、製品剛性に大きく寄与する.このため、厚み方向において、スキン層とコア層から構成される層構造の予測は射出成形品の機械物性において重要となる.本研究では，GFRPを用いた射出成形品の高次構造形成メカニズムを明らかにすることを目的とした.ガラス繊維を30wt.%の繊維強化ナイロンについて射出成形を行い，繊維配向計測，射出成形シミュレーションにより，高次構造形成メカニズムの解明を試みた.