ポリオレフィン+EVOHブレンドによるガスバリア性ポリオレフィンの開発

摘要

EVOHは高い酸素バリア性を有するプラスチックとして知られており，食品や化粧品等の内容物の酸化劣化を防ぐことができるため，これらの包装容器に多く用いられている.しかし，EVOHは湿度依存性があり，湿潤状態では酸素バリア性が低下するため，このような包装容器で用いられる場合，ポリオレフィン等で保護された“多層フィルムの内層”として用いられる.例えば,PE/EVOH/PEの多層化フィルムでは，外層のPEが水分の侵入を防ぎ，内層のEVOHが酸素バリア性を発揮することができる.しかしながら，多層フィルムは，その成形プロセスにおける工程管理が複雑であること，大型機器の初期投資が必要となること，多層フィルムを層別に分離することができず，リサイクルが困難なこと等が挙げられる.当研究室における先行研究において，PPとEVOHをブレンドすることにより，多層化処理を行うこと無く“酸素バリア性を発現できる機能性フィルム”調製の可能性を示唆した.その際，高粘度のPPと低粘度のEVOHをブレンドすることにより,PP中でEVOHが“ミルフィーユ状”の多層膜構造を形成することが，高い酸素バリア性を発現している可能性を示唆した.しかしながら，PPとEVOHは非相容なため力学物性が大幅に低下することが明らかとなった.そこで,相容化剤としてPP-g-MAHを添加した結果，相溶性が向上し，力学物性は向上したが，酸素バリア性は逆に低下する結果となり，力学物性と酸素バリア性の両立が重要であることが分かった.本研究では，PPと同等に日用生活用品や自動車用ガソリンタンク材料として多く用いられているHDPEに着目し,HDPEとEVOHの粘度差および当該系に適した相容化剤の添加により，力学物性と酸素バリア性がどのように影響を受けるのかについて検討を行った.