長周期積層構造を有するマグネシウム合金の微細マーカー法を用いた不均一塑性変形解析

摘要

亜鉛と特定の希土類元素を添加したマグネシウム合金には特徴的な長周期積層構造相(以下LPSO相)が現れ，これを第二相として合金中に分散させることで高強度高延性の発現する材料を得ることができる．この力学特性の向上は高温での押出変形等の加工によって制御できる．LPSO 相を含む合金の特性向上に寄与する組織学的因子として，押出材では母相の微細化やLPSO 相内部でのキンクの発生等の重要な特徴がこれまで見出されている．また，この押出材は母相中に強化相であるLPSO相が押出方向にファイバー状に伸長した二相複合材として捉えることができ，このため，この合金の力学特性を理解するには，各相における不均一な塑性変形状態を把握するとともに二相間の変形の相互作用を考慮する必要がある．一方，合金の強化相であるLPSO 相では上述したキンクの発生がLPSO 相そのものの強化機構の一つとして注目されており，その構造や形成過程を明らかにすることはLPSO 相の塑性変形機構を解明するための基礎的知見として重要と考えられる．そこで本研究では，LPSO 相における局所領域の不均一塑性変形状態を把握するため，電子線リソグラフィを活用したナノメートルサイズのマーカーを試料表面に付与してその変位を直接的に捉え，微小領域における不均一変形の特徴を解明することを目的とした．