インターフェログラム重畳法によるマルチスリット搭載型高感度中赤外ワンショットフーリエ分光器

摘要

我々は小型かつ低価格な中赤外分光装置を、非侵襲血糖値センサー等のへルスケアセンサーとして日常生活空間へ導入することを目指している。波長6～15μm（波数：1,500～650cm-1）の中赤外帯域は指紋領域と呼ばれ、分光吸光度による成分同定能力が高いことで知られている。しかし、中赤外光は光子エネルギーが低く、水分による吸収が極めて大きいことから、中赤外分光装置を用いたS/Nの高いデータの取得は困難である。そこで、広帯域における多波長の光を含む白色光を同時に測定可能であることから高感度なフーリエ分光法が赤外分光計測によく用いられてきた。フーリエ分光法はFTIR（Fourier transform infrared spectrometer）のようなマイケルソン干渉計をベースにした可動ミラーによって時間的に光路長差を生じさせる時間的位相シフト干渉計と、ウォーラストンプリズム等を用いることで可動域をなくした空間的位相シフト干渉計の2つに分けられる。生体計測を前提とした場合、生命活動による皮膚や血管の動き等、常に動きを伴う生物が計測対象となるため、赤外分光装置には高い計測感度の他に高い時間分解能も求められることから、空間的位相シフト干渉計の使用が必須となる。しかし、空間的位相シフト干渉計は、原理的に物体面のある点光源からの光の光束を広げた状態で使用するため、受光素子の1画素あたりの検出光量を十分に確保することができない。また、干渉性の維持を目的として物体面に視野絞りを設ける必要があることからも計測感度不足が課題となっている。そこで、結像面上での視野絞りの開口幅と遮光幅が干渉縞の半波長となるよう設計し、開口部を水平方向に並べることで光の入射面積を大きくしたマルチスリットアレイを提案する。