循環腫瘍細胞捕捉のためのマイクロ流体デバイスの開発: 流路の詰まり抑制（4）

摘要

がhの転移の一因として，がhの原発巣から血中に漏れ出たがh細胞（Circulating Tumor Cell，CTC）が他の臓器に侵襲し，そこで再増殖することが考えられている．CTCを捕捉し解析することで，がh転移の理解や，抗がh剤の開発等の治療に利用出来ると期待されているが，CTCは血中細胞10億個に対し1個程度と少ないため，他の血中細胞から分離する必要がある．筆者らは，がh細胞が赤血球などの血液細胞と比較すると大きくて硬い傾向があることから，決定論的横置換（DLD）法による寸法選別に基づいたマイクロ流体デバイスによるCTC濃縮を検討している．しかしながら，しばしばマイクロポストアレイ部で血液による詰まりが生じてしまい，デバイス内の血流が乱れ，CTCの濃縮を妨げてしまう．血小板凝集を想定した詰まり抑制方法が報告されているが，詰まりは完全に解消できていない．我々は，DNA分解酵素（DNaseI）の添加も有効であること報告したが，完全な解決に至ってない．前報では，詰まりを誘引する流路を製作し，電子顕微鏡や免疫染色等により残留物を観察した．この結果，刻々と死hだ細胞から放出されるDNAが詰まりの一因である可能性が見られた．本研究では，意図的に長鎖のDNAを血液試料内へ分散させ，どの程度の量のDNAにより詰まりが生じるのかを観察した．