自由競争市場下における携帯電話のライフサイクルシミュレーション

摘要

地下資源が乏しいわが国では，有用金属を多く含む使用済み電子機器の回収及びリサイクルが求められている．しかし，携帯電話は利用者にとって二次的利用の対象となる傾向があり，十分な回収がなされていない．また，MVNO(Mobile Virtual Network Operator)の台頭や中古端末市場の活性化など携帯電話市場を取り巻く環境が日々変化していることから，利用者の消費者行動は多様化しており，従来の単純なモデルでは，製品のライフサイクルを的確に説明することが困難となっている．そこで本稿では，個々の携帯電話利用者の消費者行動をモデル化し，市場構造の変化が消費者行動に及ぼす影響の評価を行う．モデル化の手法としては，マルチエージェント·システムを用い，市場を構成する要素および消費者をエージェントとみなし，それらが相互関係の中で自律的に行動する様子を分析することで影響関係を明らかにすることを試みる．本研究で想定する携帯電話端末のライフサイクルを図1に示す．なお，モデル内の消費者行動の意思決定過程は，ブラックウェル，エンゲル＆ミニアードのモデルを参考に構築し，端末はすべてスマートフォンを仮定した．