鉄鋼材料中介在物·き裂の画像処理を用いた三次元幾何形状解析

摘要

工業材料の微細構造は材料特性に重要な役割を果たしており，両者の関係をコンピュータの活用により定量的に理解する試みが世界的な潮流となりつつある．さらにそれらの知見を活かした高速かつ高効率な材料設計も視野に入り，産業的にも非常に重要度が高い．その中でも，画像に基づく評価技術，すなわち，微細構造の画像計測および取得画像の画像処理に基づく形状解析は，材料の定量評価手法として非常に重要である．筆者らはこれまでに，精密切削と断面観察を全自動で連続的に行なう逐次断面観察システム(硬組織対応型3次元内部構造顕微鏡,RIKEN Micro Slicer System: RMSS-003)を開発し，工業材料の効率的な三次元観察を実現してきた．本研究ではさらに，取得した工業材料の計測画像に基づく三次元形状解析システムを新たに開発し，観察から解析に至るフレームワークの構築を試みた.代表的な工業材料である鉄鋼材料を対象に，軸受鋼の介在物およびき裂に着目した．軸受鋼中の微小介在物は周囲への応力集中を生じ，介在物起点のき裂発生と破壊の要因として知られている．これまでの介在物評価は二次元観察や介在物径といった簡易な形状評価が主であるが，筆者らのこれまでの三次元観察により，介在物三次元形状は球形といった単純形状ではなく凹凸を有する複雑な形状であることが判明している．したがって，これらの複雑形状の定量化とそれを踏まえた転動疲労への影響の評価が望ましい．そのため，新たに開発した三次元形状評価システムを用い，介在物の三次元詳細形状の定量解析と，形状の疲労破壊への影響の評価を行なった．