アルミニウム合金ダイカストの温度制御による鋳ばり発生抑制手法の検討

摘要

鋳造や樹脂射出成形等の液相から固相への相変態を活用した成形方法において，金型の役割としては，①形状付与機能 ②形状固定機能 に大別される．これらのうち，形状固定機能は，液相から固相に変態させる，また冷却に伴う結晶組織制御の機能が挙げられる．例えば，アルミニウム合金の鋳造において，冷却速度を高めることは，サイクルタイムの向上ならびに凝固組織を緻密化させて機械的特性を向上させることを可能とする．このように，鋳造や樹脂射出成形において，溶融材料の型内への流入から固定化した製品を型開きして取り出すまでの金型の温度は極めて重要な因子である．その一方，実際の製品は複雑な形状をしており，金型内には温度分布が存在する．この温度分布は，金型を変形させる一因にもなる．金型が変形することにより発生する生産上の問題のひとつに鋳ばりがある．鋳ばりは，溶融材料が金型内に生成した製品部以外の隙間に流出することにより発生する．成形中に金型内に隙間が発生する要因としては，①金型温度分布，②金型の型締め力，③鋳造圧力 これらが挙げられる．このうち，金型温度分布は熱変形の発生を意味しており，鋳造や樹脂射出成形においては，成形原理上不可避である．この熱変形を抑制する方法としては，金型温度を適切に管理し，金型内に温度勾配が無い状態あるいは限りなく小さくした状態を実現することが有効であると考えられる．本研究は，金型の温度制御による鋳ばり発生状況を鋳造実験とコンピュータシミュレーションにより検証した．その結果から，鋳ばりを抑制する金型温度管理手法について検討した．