工作機械構造の熱変形に関する研究（第5報）－送り駆動系における熱変形のCAE 解析

摘要

工作機械の加工精度は機械と治工具の持つ種々の因子で定まるが，経時的に変化する熱変形が加工精度に影響する要因の一つになっている．本研究は，この熱変形に関する諸因子を調査研究し，主軸·送り駆動系の熱変位量を予測して，リアルタイムに熱変形の補正を行う制御システムを構築することである．これまで，筆者らは立て型マシニングセンタの主軸駆動系の熱変形の挙動を明らかにし，熱変位補正を行う制御システムを構築した1)．さらに，ボールねじを採用した送り駆動系のX軸，Y 軸およびZ 軸について熱変位の挙動と熱変位補正方法についての検討を行った．その結果，ナット部とボールねじを保持するブラケット部から発生する摩擦熱がボールねじの熱変形に大きく影響し，移動位置の変化によって挙動が異なることを明らかにした．また，単位時間当たりのモータ回転数の分布を累積した値を，単位時間当たりの発熱相当量として算出した熱変位補正制御方法について報告した.本報では，機械構造の熱変形の問題点を解析するために，送り駆動系の各軸について解析手段としてCAE を用い，実測値との比較結果について報告する．