プロセスダンピングを考慮した再生型びびり振動の高精度解析－びびり振動の逆解析によるプロセスダンピング変数の同定

摘要

切削加工中に自励型びびり振動が発生する場合，これを回避する手段の一つのとしてプロセスダンピングという現象が利用される．これは，切れ刃の逃げ面が工作物と干渉してびびり振動が抑制される現象であり，主軸回転数の小さい低切削速度領域で効果的に安定限界領域を拡大できることが知られている．しかし，同時に加工能率も低下させてしまうため，びびり振動を抑制できる最も効率的な条件の推定が重要となる．これに対し，振動速度と切削速度の比に着目してプロセスダンピングをモデル化した安定限界解析モデルが考案されている．実験結果と傾向が一致することが確認されており，高精度な解析手法として期待されている．しかし，プロセスダンピングのモデルに用いる変数の高精度な同定が極めて困難であり，このため解析モデルの精度が低いという問題があった．一方，著者らは加工中に計測されるびびり振動の情報を利用して安定限界の逆解析を行うことで，解析モデルの高精度な自己同定を実現する手法を提案している．上述の変数の同定についても本手法が応用できると考えられる．そこで本研究では，端面加工によってプロセスダンピングの影響を定量化する手法を考案し，この実験結果から解析モデルにおけるプロセスダンピング変数の自己同定を行った．